「地元の代理店に長く任せているが、払っている金額が妥当なのか分からない」。地方の企業からは、こうした相談をよくいただきます。この記事では、地方の企業で広告代理店の手数料(マージン)が高くなりやすい理由と、自社の実質の手数料率を確かめて見直すまでの手順をまとめます。
地方では、手数料が相場を大きく超えていることがある
運用型広告(Google広告・Meta広告など)の代理店手数料は、一般的に広告費の20%前後が目安です。ところが、私たちが相談を受けるなかでは、地方の企業で、管理費や制作費などを足した実質の手数料率がこの目安を大きく上回っているケースが少なくありません。
20%前後
運用型広告の代理店手数料(定率制)の一般的な目安
運用代行会社などの公開解説で多く見られる水準。地域ごとの公的な相場はありません
大切なのは、これは代理店が不当なことをしているという話ではない、という点です。多くの場合、地域の事情と契約の形が重なって、気づかないうちに負担が大きくなっています。まずは仕組みを知り、自社の数字を確かめることから始めます。
地方で手数料が高くなりやすい7つの理由
地方で手数料が高くなりやすいのは、主に競争の少なさと、契約の形が複雑になりやすいことが理由です。
| 理由 | 起きること |
|---|---|
| 1. 比べる相手が少ない | 地域に運用型広告を扱う代理店が少なく、相見積もりを取らないまま契約が続く |
| 2. 付き合いが長い | 何年も前の条件のまま見直されず、広告費が増えても料率が下がらない |
| 3. まとめて発注している | 新聞・テレビ・チラシ・ホームページ制作と一緒に頼み、ネット広告の手数料がいくらか見えにくい |
| 4. 請求総額に料率を掛けている | 媒体に払う広告費に対する実質の料率が、表示の料率より高くなる |
| 5. 広告費と手数料が分かれていない | 請求書が「ネット広告一式」となっていて、媒体に払った額が分からない |
| 6. 最低手数料がある | 広告費が少ない月ほど、実質の料率が上がる |
| 7. 管理費・制作費が別にある | 運用手数料のほかに、管理費やレポート作成費、バナー制作費が毎月かかる |
一方で、地元の代理店には、対面で相談できる、地域の媒体や商習慣に詳しい、急ぎの対応をしてくれる、といった良さもあります。手数料が相場より高いこと自体が悪いのではなく、払っている金額と受けている作業が見合っているかが分からない状態が問題です。
実質の手数料率は、年間の総額で出す
自社の手数料が高いかどうかは、請求書の料率ではなく、年間に払った総額のうち、媒体に流れた広告費以外がいくらかで判断します。計算は次の式です。
実質の手数料率 = (手数料+管理費+制作費などの合計)÷ 媒体に払った広告費
計算例を挙げます。月の請求が「ネット広告費20万円・運用手数料4万円・管理費3万円・レポート作成費1万円」なら、広告費以外は8万円で、8÷20=**40%**です。表示の料率は20%でも、実質は2倍になります。
40%
計算例:表示の料率20%でも、管理費などを足すと実質の手数料率は倍になる
広告費20万円・運用手数料4万円・管理費3万円・レポート作成費1万円の場合の計算例。実際の契約の数字ではありません
自社の実質の手数料率を確かめる手順
確かめる作業は、請求書と広告の管理画面があれば社内でできます。次の順に進めます。
- 1
1年分の請求書を集める
直近12か月の請求書を並べ、ネット広告に関わる行をすべて抜き出します
- 2
費用を3つに分ける
媒体に払う広告費、運用手数料、それ以外(管理費・制作費・レポート作成費・初期費用など)に分けて合計します
- 3
管理画面の費用と照らし合わせる
Google広告・Meta広告の管理画面で、同じ期間の実際の費用を確かめ、請求書の広告費と比べます
- 4
実質の料率を出す
広告費以外の合計を、管理画面の広告費で割ります
- 5
作業の中身を書き出す
毎月の作業、定例会の回数、レポートの中身を一覧にし、金額と並べます
管理画面の費用を確かめるには、広告アカウントの閲覧権限が必要です。Google広告には「読み取り専用」というアクセスレベルがあり、キャンペーンやレポートを見るだけの権限をもらえます。Meta広告では、自社のビジネスポートフォリオに広告アカウントがあるか、パートナーとしてアクセスを受けているかを確かめます。
- 請求書の広告費と、管理画面の費用(同じ期間)がおおむね一致しているか
- 手数料の計算の基準が、広告費か請求総額か
- 最低手数料があるか、その金額はいくらか
- 運用手数料とは別に、管理費・レポート作成費などが毎月かかっていないか
- 新聞・テレビ・チラシ・ホームページ制作と、ネット広告の費用が分けて記載されているか
- 広告アカウントが自社名義か、自社にどの権限があるか
- 契約期間と、解約の申し出の期限
請求書の広告費と管理画面の費用に大きな差がある場合は、広告費の中に手数料が含まれた形で請求されていることも考えられます。差の理由を代理店に聞き、計算の方法を書面で確かめてください。
見直しは「話し合い」から始める
実質の料率が目安を大きく超えていても、いきなり代理店を変える必要はありません。最初は今の代理店との話し合いで、条件を変えられないかを確かめます。
| 見直しの方法 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 料率の交渉 | 広告費の増加に合わせて料率を下げる、段階制にする | 広告費が増えたのに料率が当初のまま |
| 費用の整理 | 管理費やレポート作成費を手数料にまとめる、不要な作業を外す | 費用の行が多く、総額が見えにくい |
| 契約の切り分け | マス広告・制作とネット広告の契約を分ける | まとめて発注していて、ネット広告の費用が見えない |
| 相見積もり | 作業範囲をそろえて他社や内製化と比べる | 話し合いで条件が変わらない |
| 乗り換え・内製化 | 別の代理店に移る、運用を社内に移す | 総額に見合う作業や成果がない |
話し合いでは、「高い」と責めるより、年間の総額と作業の一覧を見せて「この金額でお願いしている作業を一緒に整理したい」と伝える方が、関係を保ったまま進めやすくなります。交渉の進め方は「広告代理店の手数料を削減する方法」でも詳しく扱っています。
履歴を失わずに乗り換えるには、アカウントの名義が鍵
代理店を変えたり、運用を社内に移したりするときに一番困るのは、広告アカウントが代理店名義で、これまでの実績や設定を引き継げないことです。自社名義のアカウントなら、代理店が変わっても同じアカウントを使い続けられ、過去のデータや自動入札の学習も残ります。
- 名義を確かめる
- 権限をもらう
- 計測を確かめる
- 並行して運用
- 切り替える
名義が代理店にある場合は、交渉や解約の話を始める前に、移管ができるかを相談しておきます。Google広告では自社の Google アカウントを管理者として招待してもらう形、Meta広告では自社のビジネスポートフォリオに広告アカウントを置き、代理店にはパートナーとしてアクセス権を渡す形が一般的です。詳しくは「広告アカウントの所有権」をご覧ください。
地方の企業が見直すときのコツ
地方の企業が見直すときは、地域の媒体とネット広告を分けて考えると進めやすくなります。新聞・テレビ・チラシのように地域の人間関係や枠の確保がものを言う媒体は、今の代理店に任せ続ける方が合うことが多い一方、Google広告やMeta広告の運用は、どこにいても同じ管理画面で行えます。
そのため、相見積もりの相手を地元に限る必要はありません。オンラインで打ち合わせができる代理店や運用会社、フリーランスの運用者、社内での運用も、同じ作業範囲で比べられます。比べるときは、定例会の回数、レポートの中身、担当者がどのくらいの頻度でアカウントを触るかを事前に聞き、今の契約と同じ物差しで並べてください。
もう一つのコツは、見直しの話を「広告費を増やすか減らすか」の話と分けることです。手数料の見直しは、同じ広告費でも媒体に届くお金を増やすための話で、広告に使う予算の判断とは別に進められます。
今の代理店のままでよい場合
見直しの結果、今の代理店のままでよいと分かることもあります。次のような場合は、続ける判断も十分に合理的です。
- 実質の手数料率が目安の範囲に近く、作業の中身にも納得している
- 新聞・テレビ・チラシなどの地域の媒体とまとめて任せることで、全体の企画が回っている
- 対面での相談や急ぎの対応に、手数料以上の価値を感じている
- 社内に広告を見る時間のある人がおらず、当面も置く予定がない
大切なのは、金額と作業の中身を知ったうえで選ぶことです。確かめた結果として続けるなら、それは見直しの成功です。
インハウスマーケでできること
インハウスマーケは、代理店とも広告主とも利害のない第三者の立場で、広告運用のインハウス化(内製化)と代理店の見直しを支援しています。無料の簡易診断(10問・約5分)では、いまの広告費と手数料から、代理店のまま見直すか、併用か、内製化かの方向性の目安をお出しします。地方の企業さまのご相談も、オンラインでお受けしています。


