広告代理店との契約は、運用が始まると見返す機会が少なくなります。困るのは、代理店を見直したいとき、内製化(インハウス化)を始めたいとき、担当者が替わったときです。この記事では、運用型広告(Google広告・Meta広告など)の運用を代理店に頼むときに、契約を結ぶ前に確かめておきたい項目をまとめます。なお、ここで扱うのは一般的な確認項目で、個別の契約の法的な判断は弁護士などの専門家にご相談ください。
契約の前に確かめる10項目
先に一覧で示します。とくに大事なのは1〜5です。
| No | 項目 | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 手数料の計算の基準 | 広告費に掛けるのか、請求総額に掛けるのか。最低手数料の有無 |
| 2 | 作業範囲 | 手数料に含まれる作業と、別料金の作業 |
| 3 | 契約期間と解約 | 最低契約期間、自動更新、解約の予告期間、違約金 |
| 4 | 広告アカウントの所有 | 誰の名義で作るか、自社に管理者の権限が残るか |
| 5 | データと成果物の権利 | 過去のデータ、バナーや広告文、計測の設定の扱い |
| 6 | 広告費の支払い | 媒体に直接払うか、代理店が立て替えて請求するか |
| 7 | 報告の形 | レポートの頻度と中身、定例会の有無 |
| 8 | 変更の承認 | どの変更を事前に相談し、どれを任せるか |
| 9 | 再委託 | 作業を別の会社に任せることがあるか |
| 10 | 秘密の保持と情報の扱い | 顧客データや売上の情報をどう扱うか |
手数料と作業範囲
計算の基準を確かめる
同じ「手数料20%」でも、計算の基準で実際の負担が変わります。広告費100万円に20%を足す形なら手数料は20万円ですが、請求総額100万円のうち20%が手数料という形なら、広告費80万円に対して20万円、実質25%になります。最低手数料がある場合は、広告費が少ない月の負担も計算しておきます。
25%
請求総額の20%が手数料のときの、広告費に対する実質の料率
請求総額100万円のうち手数料20万円・広告費80万円の場合の計算
作業範囲を書き出す
手数料に何が含まれるかを、できるだけ具体的に書いてもらいます。
- 入札・予算の調整、広告文の入れ替え、除外キーワードの追加などの日々の運用
- バナーや動画などのクリエイティブの制作(本数の上限)
- ランディングページの改修
- コンバージョンの計測の設定(Google広告のタグ、拡張コンバージョン、Meta のコンバージョンAPI など)
- レポートの作成と定例会
あいまいなままだと、「それは別料金です」「それは手数料に含まれていると思っていた」という行き違いが起きます。
契約期間と解約の条件
運用型広告は、立ち上げの数か月は成果が安定しにくいため、代理店が最低契約期間を設けるのは自然なことです。確かめるべきは、期間の長さよりも次の点です。
- 自動更新の仕組み:期間が終わると自動で同じ期間更新されるか
- 解約の予告期間:何か月前までに伝える必要があるか
- 違約金:最低期間の途中でやめる場合の扱い
- 解約後の引き継ぎ:アカウントの権限の整理や資料の受け渡しをどうするか
広告アカウントとデータの所有
契約で最も見落とされやすく、後で影響が大きいのがこの項目です。
- Google広告:自社の Google アカウントでアカウントを作り(または自社に管理者の権限を残し)、代理店はマネージャー アカウント(MCC)からリンクして運用する形が基本です
- Meta広告:自社のビジネスポートフォリオで広告アカウントを持ち、代理店には「パートナー」としてアクセスを共有する形が基本です
- 計測の資産:GA4、Google タグ マネージャー、Meta ピクセル(データセット)も、自社のアカウントで持ちます
契約書には、「広告アカウント・計測の設定・運用のデータは広告主に帰属する」「契約終了時は、代理店の権限を外し、運用の資料を引き渡す」といった取り決めを入れておくと安心です。
成果物の権利
バナー、動画、広告文、ランディングページなど、代理店が作った成果物の権利が誰にあるかを確かめます。権利が代理店に残る契約では、解約後に同じ素材を使えないことがあります。写真や素材を外部から買っている場合は、その利用の条件も確かめます。
広告費の支払いの形
広告費の支払いには、大きく2つの形があります。
| 形 | 内容 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 媒体に直接払う | 広告主のカードや請求書払いで、Google・Meta に払う | 広告費と手数料が分かれて見える |
| 代理店がまとめて請求 | 代理店が立て替え、手数料とあわせて請求する | 請求書の広告費と管理画面の金額を突き合わせる |
どちらがよいかは会社の経理の都合によりますが、代理店がまとめて請求する形の場合は、ときどき管理画面の利用額と請求書の広告費を突き合わせると安心です。
変更の承認と報告の取り決め
運用の自由度をどこまで代理店に任せるかも、契約や運用のルールで決めておくと行き違いが減ります。
| 変更の種類 | 決め方の例 |
|---|---|
| 入札・日々の予算の調整 | 月の予算の範囲内なら代理店の判断で行い、レポートで報告 |
| 月の予算の増減 | 事前に広告主の承認を得る |
| 新しいキャンペーン・媒体の追加 | 事前に提案し、承認を得てから始める |
| 広告文・クリエイティブの変更 | 表現の決まり(使わない言葉、薬機法などの確認)にあわせて、事前に確認するかを決める |
| 計測の設定の変更 | 事前に相談し、変更した月をレポートに書く |
任せる範囲が広いほど代理店は素早く動けますが、広告主が状況をつかみにくくなります。閲覧権限をもらい、変更履歴をときどき確かめられる状態にしておくと、任せる範囲を広げても安心です。
内製化を見据えるなら入れておきたい取り決め
将来、運用の一部または全部を社内に移す可能性がある場合は、次の取り決めも入れておくと移行がスムーズです。
- 運用の方針、過去の検証の結果、除外キーワードの考え方などを、文書で受け取れる
- 社内の担当者が、定例会に参加したり、作業に立ち会ったりできる
- 一部の媒体や作業だけを社内に移し、代理店と併用する形に切り替えられる
- 作業範囲を減らした場合の手数料の見直しの考え方
契約書を読むときに見落としやすい点
契約書や見積書を読むときは、書いてあることだけでなく、書いていないことにも気をつけます。見落としやすい点と、確かめ方をまとめます。
| 見落としやすい点 | 起きやすいこと | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 手数料の基準が見積書と契約書で違う | 見積もりより請求が高くなる | 見積書の計算式と、契約書の手数料の条文を並べて読む |
| 作業範囲が「運用一式」とだけ書かれている | 何が含まれるかで認識がずれる | 一式の中身を一覧にしてもらい、別紙として添える |
| 自動更新の期間が最初の契約期間と違う | 更新のたびに長い期間に縛られる | 更新後の期間と、予告の期限を条文で確かめる |
| アカウントの所有について何も書かれていない | 解約のときに、データの引き継ぎで話がこじれる | 所有と、契約終了時の権限の扱いを書き加えてもらう |
| 媒体の追加や新しいサービスの費用の決め方がない | 媒体を増やすたびに、条件の交渉が一からになる | 媒体を追加したときの手数料の考え方を、先に決めておく |
気になる点があれば、契約の前に質問し、答えをメールや覚書で残しておきます。口頭の約束は、担当者が替わると引き継がれないことがあるためです。
契約したあとに見直す
契約は結んで終わりではありません。広告費が大きく増えたとき、社内の体制が変わったとき、少なくとも年に一度は、手数料・作業範囲・期間の条件が今の状況に合っているかを見直します。広告費が増えたのに料率が一律のままなら、段階制などへの見直しを相談する余地があります。
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