広告運用のインハウス化(内製化)は、計画の段階では順調に見えても、実際に動き出すと「こんなはずでは」という場面に出会います。この記事では、私たちが相談を受けるなかでよく耳にする、始める前と始めてからの「あるある」を10の場面にまとめ、それぞれの先回りの対策を整理します。失敗の原因を体系的に知りたい方は「インハウス化でよくある失敗7つ」もあわせてご覧ください。
インハウス化のあるあるは、始める前と始めてからに分かれる
インハウス化のあるあるは、始める前に分かる「資産と情報」の問題と、始めてから起きる「人と時間」の問題に分かれます。前者は確認すれば早めに見つかり、後者は社内の仕組みで軽くできます。
| 時期 | あるある | 先回りの対策 |
|---|---|---|
| 始める前 | 1. アカウントが代理店名義だった | 名義と権限を最初に確かめる |
| 始める前 | 2. 計測が代理店任せで中身が分からない | 計測の一覧を受け取り、社内で説明できるようにする |
| 始める前 | 3. 設定の意図がどこにも残っていない | 引き継ぎの資料で「なぜそうしたか」を受け取る |
| 始める前 | 4. 誰が担当するか決まらない | 担当と意思決定者を分けて決める |
| 始めてから | 5. 兼任で毎日見られない | 毎日は異常の確認だけにし、点検を仕組みにする |
| 始めてから | 6. 最初の数か月で成果が揺れて不安になる | 比べる数字と、待つ期間を先に決める |
| 始めてから | 7. 上司がレポートを見ていない | 月1回、数字を一緒に見る場をつくる |
| 始めてから | 8. 制作が回らない | 素材づくりの役割と頻度を決め、足りなければ外部に頼む |
| 始めてから | 9. 担当者が辞めて止まる | 管理者を複数にし、作業と判断を記録する |
| 始めてから | 10. 相談相手がいない | 社外に相談できる先を決めておく |
始める前のあるある
始める前のあるあるは、代理店との契約を終える前に確かめれば、多くを避けられるものです。契約を終えてから気づくと、確かめる相手がいなくなります。
1. アカウントが代理店名義だった
インハウス化を決めて管理画面を開こうとしたら、広告アカウントが代理店のものだった、という場面です。代理店名義のままでは、契約を終えると過去の実績や設定を引き継げないことがあります。Google広告では、自社の Google アカウントに「管理者」のアクセスレベルがあるかを確かめます。詳しくは「広告アカウントの所有権」で扱います。
2. 計測が代理店任せで中身が分からない
コンバージョンの数字は毎月レポートで見ていたのに、何を1件と数えているのか、どのタグで計測しているのかを社内の誰も説明できない、という場面です。Google広告のコンバージョン、GA4、Meta ピクセルが、それぞれ何を数えているかの一覧を受け取り、実際の申込みや購入の件数と比べておきます。
3. 設定の意図がどこにも残っていない
除外キーワードや予算の配分はあるのに、なぜそうしたのかが分からない、という場面です。理由が分からない設定は、触ってよいのかどうか判断できません。引き継ぎの資料では、設定の一覧だけでなく、主な判断の理由も書いてもらいます。
4. 誰が担当するか決まらない
「インハウス化する」と決めたのに、実際に手を動かす人と、予算や目標を決める人が決まらないまま時間が過ぎる場面です。担当者と意思決定者は分けて決め、意思決定者が予算と目標の獲得単価を決める形にします。
- 広告アカウントとビジネスポートフォリオが自社名義で、自社に管理者の権限がある
- コンバージョンの定義と計測の方法を、社内の人が説明できる
- 除外キーワードや予算配分など、主な設定の理由を資料で受け取った
- 担当者と意思決定者が決まっている
- 直近12か月の広告費・コンバージョン数・獲得単価を月ごとに残した
始めてからのあるある
始めてからのあるあるは、人と時間の問題です。担当者の頑張りだけに頼らず、社内の仕組みで軽くします。
5. 兼任で毎日見られない
広告の担当者がほかの仕事と兼任で、忙しい週は管理画面を開けない、という場面です。毎日やることを「配信が止まっていないか」「予算を使いすぎていないか」の確認だけに絞り、改善の作業は週に一度まとめて行います。毎日の点検は、通知やツールに任せると負担が減ります。
6. 最初の数か月で成果が揺れて不安になる
切り替えて数週間で獲得単価が上がり、社内で「代理店の方がよかったのでは」という声が出る場面です。入札戦略の設定を変えたり、キャンペーンやキーワードを入れ替えたりすると、自動入札が「学習中」になり、成果が揺れることがあります。切り替えの直後は大きな変更を避け、比べる数字(切り替え前と前年の同じ月)と、様子を見る期間を先に社内で決めておきます。
- 数字を残す
- 並行して運用
- 大きく変えない
- 比べて判断
7. 上司がレポートを見ていない
担当者が毎月レポートを作っているのに、上司や経営者が読んでいない場面です。担当者は判断の基準を持てず、やる気も続きません。レポートを送るだけでなく、月に1回、30分でもよいので数字を一緒に見て、次の1か月に試すことを決める場をつくります。
8. 制作が回らない
運用の判断はできるようになったのに、新しい広告文やバナーを作る時間がなく、同じ広告が出続ける場面です。素材の写真や伝えたいことは社内で用意し、デザインの作業だけを外部に頼むなど、制作の役割を分けます。
9. 担当者が辞めて止まる
担当者が退職や異動をした途端、誰もアカウントを触れなくなる場面です。広告アカウントの管理者を2人以上にし、毎日・毎週・毎月の作業と判断の理由を記録しておきます。Google広告の変更履歴では、過去の変更を誰がいつ行ったかを確かめられるため、引き継ぎの手がかりにもなります。
10. 相談相手がいない
判断に迷っても社内に聞ける人がいない場面です。地方の会社では、近くに広告運用に詳しい人が見つかりにくいこともあります。ただ、Google広告やMeta広告の運用はどこにいても同じ管理画面で行えるため、相談相手は地元に限らず、オンラインで探せます。
外部のプロ人材が役立つところ
インハウス化は、何もかも社内でやることではありません。足りない部分だけを外部のプロ人材で補うと、社内の負担を抑えながら進められます。副業で関わる広告運用のプロ人材は、次のような場面で役立ちます。
| 場面 | プロ人材に頼めること |
|---|---|
| 始める前 | 計測とアカウントの設定の点検、引き継ぎの資料の読み解き |
| 成果が揺れたとき | 変更履歴と数字から、原因の見立てを一緒に考える |
| 制作が回らないとき | 広告文・バナーの作成や、入れ替えの計画づくり |
| 担当者が替わるとき | 新しい担当者への手順の引き継ぎ、判断の基準づくり |
| 相談相手がいないとき | 月に数回の相談相手として、判断の壁打ちをする |
外部に頼むときも、判断の基準と記録は社内に残すことが大切です。プロ人材の知見を社内の手順書や判断の基準として書き残しておけば、関わりが終わったあとも社内の力として残ります。
インハウスマーケでできること
インハウスマーケは、TUKURO が第三者の立場でインハウス化を支援するサービスです。無料の簡易診断(10問・約5分)では、いまの体制のどこにつまずきやすい点があるかの目安をお出しします。インハウスプログラムでは、トレーナーが週30分で伴走し、社内で足りない実働は、広告運用のプロ人材を紹介する即戦力アサインで補うこともできます。


