インハウス化は6つの手順で進めます
広告運用のインハウス化(内製化)は、次の6つの手順で進めるのが基本です。代理店との契約をいきなり終えるのではなく、自社で判断できる範囲を段階的に広げます。
| 手順 | やること | 終わりの目安 |
|---|---|---|
| 1. 目的を決める | 何のために、どこまで内製化するかを決める | 目的と目指す段階が社内で共有できた |
| 2. 現状を把握する | 費用・成果・契約・権限を洗い出す | 年間の費用と、いまの成果の水準がわかる |
| 3. アカウントと計測を整える | 名義・権限・コンバージョン計測を確かめる | 自社で数字を見られ、計測を信頼できる |
| 4. 体制をつくる | 担当者・役割・学ぶ順番を決める | 誰が何を判断するかが決まっている |
| 5. 並行して運用する | 代理店と一緒に運用しながら引き継ぐ | 担当者が日々の判断を一人でできる |
| 6. 切り替えて振り返る | 契約の範囲を見直し、成果を比べる | 切り替え前後の成果を比べられる |
以下、それぞれの手順で確かめることを説明します。
手順1:目的と目指す段階を決める
最初に決めるのは「なぜインハウス化するのか」と「どこまで自社でやるのか」です。目的によって、必要な人や期間が大きく変わります。
よくある目的は、代理店の手数料(マージン)を減らしたい、判断を速くしたい、ノウハウを社内に残したい、の3つです。手数料を減らすことだけが目的なら、代理店と手数料を交渉する、戦略だけ自社で持つ、といった選択肢もあります。目指す段階は「数字を見られる」「判断を自社でする」「作業も自社でする」のどれかで考えると、社内で話がそろいます。
手順2:いまの費用と成果を把握する
次に、いまの状態を数字でつかみます。比べる基準がないと、インハウス化したあとに良くなったのか悪くなったのかが判断できません。
- 費用:広告費・運用手数料・制作費・ツール費を分けて、直近12か月の合計を出す
- 成果:コンバージョン数、獲得単価(CPA)、広告費用対効果(ROAS)を、月ごと・媒体ごとに並べる
- 契約:解約の予告期間、アカウントの名義、制作物の権利の扱いを契約書で確かめる
- 作業:代理店が毎月どんな作業をしているかを、レポートや打ち合わせの記録から書き出す
作業の書き出しは見落とされがちですが、引き継ぐ仕事の量を見積もるのに欠かせません。
手順3:アカウントと計測を整える
インハウス化の土台は、自社が広告アカウントを持ち、正しい数字を見られることです。ここが整っていないと、どれだけ人を育てても判断を誤ります。
アカウントの名義と権限
Google広告のアクセス権には、管理者・標準・読み取り専用・お支払いとご請求・メール専用があります(Google 広告ヘルプ「Google 広告アカウントへのアクセス権を管理する」)。自社名義のアカウントに、自社の担当者が管理者として入っている状態が理想です。Meta広告も、ビジネスポートフォリオ(旧ビジネスマネージャ)で自社が広告アカウントを持ち、代理店にはパートナーとして権限を渡す形が一般的です。代理店名義の場合の扱いは「広告アカウントの所有権」で詳しく扱います。
コンバージョン計測
Google広告のコンバージョンタグ、GA4、Meta ピクセルが正しく動いているかを確かめます。計測の精度を上げる方法として、Google広告の拡張コンバージョンや、Meta のコンバージョンAPI(CAPI)があります。自動入札は計測した成果をもとに学習するため、計測の誤りはそのまま成果の悪化につながります。
手順4:体制と役割を決める
体制づくりでは、人数よりも「誰が何を判断するか」を先に決めます。役割は大きく3つに分けられます。
| 役割 | 主な仕事 |
|---|---|
| 意思決定者 | 予算と目標(CPA・ROAS)を決め、月ごとに成果を確認する |
| 運用担当者 | 日々の数字の確認、入札・予算・検索語句の調整、レポート |
| 制作担当 | 広告文・バナー・動画・LP の制作と差し替え |
1人で複数の役割を兼ねても構いません。兼任の場合は、毎日やること・毎週やること・毎月やることを分けて、作業の量を見える形にしておくと続けやすくなります。
手順5:代理店と並行して運用する
いきなり切り替えず、一定期間は代理店と並行して運用するのが安全です。担当者は、代理店がしている判断の理由を聞きながら、自分でも同じ判断ができるかを試します。
- 1
見るだけの期間
最初は代理店の作業を見るだけにし、週に1回、判断の理由を聞く
- 2
小さな作業から担当する
検索語句の確認や除外キーワードの追加など、影響の小さい作業から担当者が行う
- 3
案を出して確認してもらう
予算配分や入札戦略の変更は、担当者が案を出し、代理店に確認してもらう
- 4
一人で判断する
担当者が一人で判断し、代理店は相談役に回る
手順6:切り替えて成果を振り返る
担当者が日々の判断を一人でできるようになったら、契約の範囲を見直して切り替えます。切り替えから1〜3か月は、手順2で出した数字と月ごとに比べます。
成果が落ちた場合は、すぐに元に戻すのではなく、計測・予算・入札・クリエイティブのどこが変わったかを確かめます。季節による変動もあるため、前年の同じ月とも比べると判断を誤りにくくなります。
全体のスケジュールの考え方
6つの手順にかかる期間は、会社の体制や広告費の規模によって大きく違います。期間を決めるときは、手順ごとの長さを積み上げるよりも、動かせない日付から逆算する方が現実的です。
逆算の起点になるのは、代理店との契約の更新日と解約の予告期間です。たとえば、更新日の数か月前に予告が必要な契約なら、その日までに並行運用の見通しを立てておく必要があります。そこから、並行運用の期間、体制づくりと計測の整備にかかる期間をさかのぼり、目的と現状の把握をいつまでに終えるかを決めます。
- 契約の更新日
- 予告の期限
- 並行運用
- 体制と計測
- 目的と現状
スケジュールに余裕がない場合は、無理に一度で切り替えず、契約の範囲を狭めて更新し、次の更新までに自社の範囲を広げる方法もあります。
手順ごとに残しておく記録
インハウス化は、担当者が替わっても続けられる形にしておくことが大切です。手順ごとに、次のような記録を残しておくと、あとから判断の理由をたどれます。
| 手順 | 残しておく記録 |
|---|---|
| 目的を決める | 目的、目指す段階、決めた人と日付 |
| 現状を把握する | 直近12か月の費用と成果の表、代理店の作業一覧 |
| アカウントと計測を整える | 名義と権限の一覧、計測の点検の結果 |
| 体制をつくる | 役割の分担、毎日・毎週・毎月の作業の手順書 |
| 並行運用・切り替え | 引き継いだ作業、判断の基準、切り替え前後の比較 |
記録は立派な資料である必要はありません。共有のスプレッドシートや社内のドキュメントに、日付と内容を短く書き足していくだけでも十分役に立ちます。とくに「なぜその判断をしたか」は時間がたつと思い出せなくなるため、その場で一行でも残しておくことをおすすめします。
代理店に相談するときの伝え方
代理店に相談するときは、「契約を終える」ことよりも「自社で判断できる範囲を広げたい」という目的を先に伝えると、話し合いが進みやすくなります。あわせて、並行運用の期間、引き継いでほしい作業の一覧、相談役として残ってほしい範囲があればその内容を示します。
代理店にとっても、引き継ぎの段取りが見えている方が人の配置を考えやすくなります。引き継ぎの資料(キャンペーンの設計の意図、除外キーワードの方針、過去に試してうまくいかなかったこと)を依頼しておくと、切り替えたあとに同じ失敗を繰り返しにくくなります。
インハウスマーケでできること
インハウスマーケは、TUKURO が第三者の立場でインハウス化を支援するサービスです。無料の簡易診断では、いまの費用と体制から、どの手順から始めるとよいかの目安をお出しします。トレーナーが12か月のロードマップをもとに伴走するインハウスプログラムもあります。


