広告運用のインハウス化(内製化)を考えたとき、最初に悩むのが「誰がやるのか」です。経験者を採用するのか、社内の誰かを育てるのか、何人必要なのか。この記事では、インハウスの広告運用に必要な人材を役割に分けて整理し、採用と育成の進め方をまとめます。
インハウスの広告運用に必要な4つの役割
インハウスの広告運用に必要な人材は、運用の実務・計測と分析・クリエイティブ・社内の推進の4つの役割に分けて考えると整理できます。1人が複数の役割を担うことも多く、役割の数と人数は一致しません。
| 役割 | 主な仕事 | 求められるスキル |
|---|---|---|
| 運用の実務 | 入札・予算の調整、キーワードと除外キーワード、広告文の入れ替え、日々の点検 | Google広告・Meta広告の管理画面の操作、自動入札の理解 |
| 計測と分析 | コンバージョンの設定、GA4 の分析、レポート、検証の設計 | 計測タグ、拡張コンバージョン、コンバージョンAPI(CAPI)、表計算 |
| クリエイティブ | バナー・動画・広告文・ランディングページの企画と改善 | 訴求の考え方、デザインの基礎、検証の回し方 |
| 社内の推進 | 予算と目標の決定、他部署との調整、経営への説明 | 事業の数字の理解、意思決定、関係者の調整 |
見落とされやすいのが「社内の推進」です。広告の知識がある担当者がいても、予算や目標を決める人、営業や商品の部署と調整する人がいないと、インハウス化は進みません。
運用の担当者に求められるスキル
運用の実務を担う人に求められるスキルを、段階ごとにまとめます。
基礎
- Google広告・Meta広告の管理画面の構造(キャンペーン・広告グループや広告セット・広告)を理解している
- 主な指標(クリック率・クリック単価・コンバージョン率・CPA・ROAS)を計算し、説明できる
- 検索語句のレポートを読み、除外キーワードを足せる
実務
- 自動入札(コンバージョン数の最大化、目標CPA、目標ROASなど)の違いと選び方を説明できる
- P-MAX(パフォーマンス マックス)や Advantage+ など、媒体の自動化の仕組みと、人が決めるべきことを理解している
- 予算の消化ペースを見て、日予算や入札を調整できる
- 成果の変化の原因を、計測・市場・サイト・運用に切り分けて考えられる
応用
- 事業の目標から、目標CPAや目標ROASを逆算して決められる
- 検証を設計し、結果を数字で判断できる
- 経営や他部署に、広告の成果と次の打ち手を説明できる
採用と育成の比べ方
人材の確保は、採用と育成のどちらか、または組み合わせで考えます。
| 方法 | よいところ | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 経験者を採用する | 立ち上げが早い。仕組みづくりを任せられる | 採用に時間と費用がかかる。事業の理解は入社後に深める必要がある |
| 社内の人を育てる | 事業や商品への理解がある。定着しやすい | 独り立ちまで時間がかかる。教える人が要る |
| 外部の専門家と組む | 必要な期間・役割だけ頼める | 社内に知見を残す仕組みが要る |
学習に使える公式の資料
- Google の Skillshop:Google広告の基礎から検索・動画・P-MAX などの学習コンテンツと、無料の認定資格があります
- Google 広告ヘルプ:設定や指標の定義を確かめるときの一次情報です
- Meta Blueprint:Meta広告の学習コンテンツと認定の仕組みがあります
- Meta ビジネスヘルプセンター:ビジネスポートフォリオの権限や広告の設定を確かめるときの一次情報です
採用するときに確かめたいこと
経験者を採用する場合、職務経歴書の「運用した広告費の規模」だけでは、実力は分かりにくいものです。面接では、次のような点を聞くと、実務の考え方が見えてきます。
- 成果が落ちたとき、何から確かめたか:計測・市場・サイト・運用のどこから切り分けたか
- 自動入札をどう選び、目標の値をどう決めたか:事業の数字から逆算できているか
- 検証の例:何を仮説に、どう試し、どう判断したか
- 社内外との調整の経験:営業や制作、代理店とどう役割を分けたか
- 使ってきた媒体と体制:広告主側の経験か、代理店側の経験か
代理店で運用してきた人は、多くのアカウントを見た経験と運用の手の速さが強みです。広告主側で運用してきた人は、事業の数字や社内の調整に慣れていることが強みです。どちらが合うかは、自社でいちばん足りない役割によって決まります。
役割を社内と外部に分ける例
すべてを社内でこなす必要はありません。役割ごとに、社内と外部の分け方を決めておくと体制が組みやすくなります。
| 役割 | 社内に置く場合 | 外部に頼む場合 |
|---|---|---|
| 運用の実務 | 毎日の点検と小さな調整を社内で行う | 立ち上げや大きな設計の変更だけ外部に頼む |
| 計測と分析 | 月次の振り返りを社内で行う | 計測タグやコンバージョンAPI(CAPI)の設定を頼む |
| クリエイティブ | 訴求の方向を社内で決める | 制作の実作業を頼む |
| 社内の推進 | 社内に置くのが基本 | 外部は助言の立場にとどめる |
社内の推進だけは、外部に任せにくい役割です。予算と目標を決め、他部署と調整するのは、社内の人にしかできないためです。
少人数で始めるときの体制
最初から4つの役割をすべて社内でそろえる必要はありません。少人数で始めるときは、次の順で考えると現実的です。
- 1
社内の推進役を決める
予算と目標を決め、他部署と調整できる人です。広告の専門家でなくてもかまいません
- 2
運用の担当者を1人決める
採用か社内の異動で、日々の運用を担う人を決めます
- 3
足りない役割を外部で補う
計測の設定やクリエイティブの制作など、社内で難しい部分は外部の専門家や代理店に頼みます
- 4
手順と判断の基準を文書に残す
毎日・毎週・毎月の作業と、判断の基準を書き出します
- 5
少しずつ社内に移す
担当者が慣れてきたら、外部に頼んでいる作業を一つずつ社内に移します
担当者が他の仕事と兼任する場合は、毎日の点検を仕組みにして、作業の時間を減らす工夫が要ります。兼任の体制については、兼任でも回る広告運用の仕組みで詳しく扱っています。
育成を進めるときの任せ方の順番
社内の人を育てる場合、何から任せるかの順番を決めておくと、担当者も教える側も迷いません。影響の小さい作業から任せ、判断の重い作業は後に回すのが基本です。
- 数字の確認
- 除外の追加
- 広告文の改善
- 予算と入札
- 目標の設計
最初は、毎日の数字の確認と、気になる変化の報告から始めます。次に、検索語句を見て除外キーワードを足す、成果の悪い広告文を入れ替える、といった元に戻しやすい作業を任せます。予算や入札の調整、目標CPA・ROASの設計は、成果への影響が大きいため、経験者のレビューを受けながら最後に任せます。
それぞれの段階で、「どの数字を見て、どう判断したか」を担当者に説明してもらうと、知識が身についているかを確かめられます。判断の理由を言葉にできるようになったら、次の段階に進む目安になります。
人材の面でよくある失敗
- 担当者1人に任せきりにする:その人が辞めたり異動したりすると、運用が止まります。2人以上が広告アカウントを見られる状態にしておきます
- 推進役がいない:担当者が提案しても、予算や目標を決める人がいないと動けません
- 育成の時間をとらない:他の仕事と兼任のまま、学ぶ時間がとれず、結局外部に戻すことになりかねません
- 代理店から急に切り替える:社内の準備が整う前に代理店をやめると、成果が落ちることがあります。代理店との併用の期間をとると安心です
インハウスマーケでできること
インハウスマーケは、代理店とも広告主とも利害のない第三者の立場で、インハウス化を支援しています。インハウスプログラムでは、トレーナーが必要な人材と育て方を一緒に考え、12か月のロードマップで社内の運用力を育てます。社内で足りない実働は、外部のプロ人材で補う方法もご案内できます。まずは無料の簡易診断(10問・約5分)で、いまの体制から合う始め方を確かめてください。


