広告運用のインハウス化とは
広告運用のインハウス化とは、広告代理店に任せていた運用型広告の「判断」と「作業」を、自社の担当者が行える状態にすることです。内製化とも呼ばれます。対象になるのは、Google広告(旧 Google AdWords)やMeta広告(Facebook・Instagram 広告)のように、入札・予算・広告文・ターゲティングを日々調整する広告です。
インハウス化は「すべてを自社でやる」ことだけを指すわけではありません。実務では、次のような段階があります。
| 段階 | 自社でやること | 外部に任せること |
|---|---|---|
| 1. 見える化 | 数字の確認・代理店への質問 | 運用の作業すべて |
| 2. 判断の内製化 | 予算配分・目標の決定・施策の承認 | 設定作業・制作 |
| 3. 運用の内製化 | 日々の調整・検索語句の確認・入札の見直し | 制作や一部の媒体 |
| 4. 完全内製 | 戦略から作業まで | なし(必要に応じて相談) |
多くの会社は、いきなり4を目指すのではなく、1から順に進めます。自社がどの段階を目指すのかを決めることが、インハウス化の最初の一歩です。
インハウス化のメリット
インハウス化の主なメリットは、費用・速さ・ノウハウの3つです。
代理店の手数料(マージン)が減る
20%前後
国内の広告代理店の運用手数料の一般的な目安
広告費に対する料率。月の広告費300万円なら、手数料は月60万円前後になります
国内の広告代理店の運用手数料は、一般的に広告費の20%前後が目安とされています。たとえば月の広告費が300万円なら、手数料は月60万円前後になります。インハウス化すると、この手数料の代わりに人件費やツール費がかかりますが、広告費が大きいほど差が出やすくなります。費用の比べ方は「インハウス化の費用」で詳しく扱います。
判断が速くなる
代理店を通すと、依頼・確認・反映のやりとりに時間がかかります。社内の担当者が管理画面を見て判断できれば、セールの開始や在庫切れ、急な成果の悪化にその日のうちに対応できます。
ノウハウと数字が社内に残る
どの検索語句で成果が出たか、どの広告文が効いたかという知見は、事業の資産です。代理店に任せきりだと、担当者が替わったり契約を終えたりしたときに、その知見が社内に残りにくくなります。
インハウス化のデメリット
デメリットは、人材と体制にまつわるものが中心です。
人材の確保と育成に時間がかかる
運用型広告は、媒体の仕様変更が多く、学ぶことが絶えません。経験者の採用は簡単ではなく、未経験者を育てるには数か月単位の時間がかかります。
属人化しやすい
担当者が1人だけだと、その人が休んだり辞めたりしたときに運用が止まります。手順を文書にする、数字を複数人で見る、といった仕組みが必要です。
最新情報や他社の知見が入りにくい
代理店は多くのアカウントを見ているため、媒体の新機能や業界の傾向に触れる機会が多いです。自社だけで運用すると、こうした情報が入りにくくなります。
インハウス化が向いている会社・向いていない会社
向いているかどうかは、広告費の規模・社内の人・事業のスピードの3点で判断できます。
| 観点 | 向いている | 慎重に考えたい |
|---|---|---|
| 広告費 | 手数料の額が担当者の人件費に近い、または上回る | 手数料が人件費を大きく下回る |
| 社内の人 | 担当できる人がいる、または育てる時間がある | 担当者がおらず、採用の予定もない |
| 事業のスピード | セールや在庫で広告を頻繁に変える | 広告の内容がほとんど変わらない |
| 数字の扱い | 売上・粗利と広告の数字をつなげて見たい | 広告の数字だけ見られれば十分 |
始める前に確かめること
インハウス化を決める前に、次の4点を確かめておくと、あとで困りません。
- 広告アカウントの所有者:アカウントが自社名義か、代理店名義かを確認する。代理店名義の場合、過去のデータを引き継げるかを先に相談する
- 自社の権限:Google広告には管理者・標準・読み取り専用などのアクセス権がある。まずは閲覧できる権限があるかを確認する
- 計測の状態:コンバージョン(成果)の計測が正しく設定されているか、GA4 と数字が大きくずれていないかを確かめる
- いまの費用:広告費・手数料・制作費を分けて、年間でいくらかかっているかを把握する
代理店に任せる運用との違い
インハウス化と代理店への委託の違いは、作業をする人の違いだけではありません。判断の速さ、知見の残り方、費用のかかり方が変わります。
| 観点 | 代理店に任せる | インハウス化する |
|---|---|---|
| 判断する人 | 代理店が提案し、自社が承認する | 自社の担当者と意思決定者が決める |
| 対応の速さ | 依頼・確認・反映のやりとりが入る | 社内で決まれば、その日のうちに動ける |
| 知見の残り方 | 代理店の担当者に集まりやすい | 社内に残るが、担当者に偏りやすい |
| 費用のかかり方 | 広告費に応じた手数料 | 人件費・ツール費・教育費 |
| 外の情報 | 多くのアカウントを見た知見が入る | 自分で集める必要がある |
どちらが優れているということではなく、自社の体制と目的に合う方を選ぶ、あるいは両方を組み合わせることが現実的です。
インハウス化についてのよくある誤解
インハウス化を検討するとき、次のような誤解から話が進まなくなることがあります。
代理店との契約をすぐに終えなければならない
インハウス化は、代理店との契約を終えることと同じではありません。数字を自社で見られるようにする、判断だけを自社に移す、といった段階から始められます。代理店との併用を続ける会社も多く見られます。
広告の専門家を採用しないと始められない
最初に必要なのは、予算と目標を決め、数字を見て判断する社内の人です。広告の専門家でなくても、媒体が公開している学習コンテンツや外部の支援を使いながら、少しずつ実務を覚えることができます。
自動化が進んだので、運用の手間はかからない
Google広告の自動入札や Meta広告の Advantage+ など、媒体の自動化は進んでいます。それでも、何を成果として計測するか、予算と目標をいくらにするか、どの広告を見せるかといった判断は人が決める必要があります。自動化で作業は減っても、判断の責任はなくなりません。
目指す段階の選び方
どの段階を目指すかは、社内で広告に使える時間と、判断のスピードがどれだけ事業に効くかで決めます。社内に担当者を置く余力が小さい会社は、まず見える化と判断の内製化までを目指し、作業は代理店に任せる形が無理なく続きます。セールや在庫に合わせて広告を頻繁に変える会社や、広告費が大きく手数料の額が人件費を上回る会社は、運用の内製化まで進める意味が大きくなります。
一度決めた段階も、固定する必要はありません。半年ごとなど区切りを決めて、担当者の習熟度と成果を見ながら見直します。段階を進めるときは、前の段階の作業が安定して回っているかを確かめてからにすると、成果の揺れを小さくできます。
検討を始めるときの進め方
インハウス化を検討するときは、まず社内で目的を言葉にし、いまの費用と成果を数字でつかむところから始めます。そのうえで、目指す段階(見える化・判断の内製化・運用の内製化・完全内製)を決め、必要な人と期間を見積もります。具体的な手順は「インハウス化の進め方」で、つまずきやすい点は「インハウス化でよくある失敗」で詳しく扱っています。
インハウスマーケでできること
インハウスマーケは、TUKURO が第三者の立場でインハウス化を支援するサービスです。無料の簡易診断では、10の質問に答えるだけで、いまの費用と体制から、合う進め方の目安をお出しします。代理店に任せたまま、社内で状況をつかむところから始めることもできます。


