KPIは、売上や利益の目標から逆算して決めます
広告運用のKPI(重要業績評価指標)は、売上や利益の目標(KGI)から逆算して決めます。「CPAは安いほどよい」「ROASは高いほどよい」とだけ考えると、成果の数そのものが減り、事業の目標に届かないことがあるからです。
KPI設計の基本の流れは次のとおりです。
- 1
事業の目標(KGI)を決める
月の売上、成約数、利益など
- 2
広告で担う分を決める
目標のうち、広告から何件・いくら生むか
- 3
1件あたりの上限を出す
粗利から許容CPA、または損益分岐のROASを出す
- 4
目標CPA・目標ROASを決める
上限から残したい利益を引く
- 5
必要な広告費を出す
目標の件数 × 目標CPA
計算の流れの例
数字を当てはめると、流れがつかみやすくなります。以下は計算のしかたを示すための例です。
月に成約を20件増やしたい会社で、成約1件の粗利が30万円、問い合わせから成約する割合が10%だとします。成約20件に必要な問い合わせは、20件 ÷ 10% = 200件です。許容CPAは30万円 × 10% = 3万円なので、利益を残すために目標CPAを2万円に置くと、必要な広告費は200件 × 2万円 = 月400万円になります。
この広告費が出せない場合は、目標の件数を下げるか、成約率を上げる(営業の改善)か、粗利を上げる(価格や商品の見直し)かを考えます。広告の数字だけでは解けない問題が、ここで見えてきます。KPI設計の計算は、広告の担当者だけでなく、営業や経営の担当と一緒に行うと、前提の数字(成約率や粗利)のずれを早く直せます。
主な指標と計算式
広告運用でよく使う指標と計算式を整理します。
| 指標 | 意味 | 計算式 |
|---|---|---|
| CPA(獲得単価) | 成果1件あたりの広告費 | 広告費 ÷ コンバージョン数 |
| ROAS(広告費用対効果) | 広告費に対する売上の割合 | 広告からの売上 ÷ 広告費 × 100% |
| CVR(コンバージョン率) | クリックのうち成果になった割合 | コンバージョン数 ÷ クリック数 × 100% |
| CTR(クリック率) | 表示のうちクリックされた割合 | クリック数 ÷ 表示回数 × 100% |
| CPC(クリック単価) | クリック1回あたりの広告費 | 広告費 ÷ クリック数 |
CPA は CPC ÷ CVR と分解することもできます。CPA が悪化したときに、クリックの単価が上がったのか、成果になる割合が下がったのかを切り分けるのに役立ちます。
目標CPAの決め方
目標CPAは、1件の成果から得られる粗利をもとに決めます。これ以上かけると赤字になる上限を許容CPAと呼び、そこから残したい利益を引いた値を目標にします。
商品を直接売る場合
許容CPA = 1件あたりの売上 × 粗利率
たとえば、1回の購入が平均1万円、粗利率が40%なら、許容CPAは4,000円です。1件あたり1,000円の利益を残したいなら、目標CPAは3,000円になります(数字は計算の例です)。
問い合わせ(リード)を集める場合
許容CPA = 成約1件の粗利 × リードから成約する割合
たとえば、成約1件の粗利が30万円、リードの成約率が10%なら、許容CPAは3万円です。リード獲得では、リードの質(成約しやすさ)によって許容CPAが大きく変わるため、営業の数字と一緒に見直すことが大切です。
LTV を使う場合
定期購入やサブスクリプションのように、2回目以降の購入が見込める事業では、1回目の粗利ではなく、LTV(顧客生涯価値)をもとに許容CPAを出す考え方もあります。ただし、回収までの期間が長くなるほど資金の負担が増えるため、何か月で回収するかを先に決めておきます。
目標ROASの決め方
通販のように、広告からの売上を計測できる場合は、ROAS を目標にすることもあります。損益分岐のROASは、粗利率から計算できます。
損益分岐のROAS = 1 ÷ 粗利率 × 100%
| 粗利率 | 損益分岐のROAS |
|---|---|
| 20% | 500% |
| 30% | 約333% |
| 40% | 250% |
| 50% | 200% |
250%
粗利率40%のときの損益分岐のROAS
1 ÷ 0.4 × 100% で計算。送料や決済手数料を引く前の粗利率の場合
この値を上回るROASを目標にします。送料や決済手数料、返品などがある場合は、それらを引いた粗利で計算します。
自動入札に目標を入れるときの注意点
Google広告では、コンバージョン数の最大化やコンバージョン値の最大化の入札戦略に、目標コンバージョン単価(目標CPA)や目標広告費用対効果(目標ROAS)を設定できます。Meta広告でも、広告セットで1件あたりの費用の目安を設定できる入札の方法があります。
自動入札に目標を入れるときは、次の点に気をつけます。
- いまの実績に近い値から始める:実績と大きく離れた目標を入れると、配信が大きく減ることがあります
- 少しずつ変える:一度に大きく変えると、学習がやり直しになり、成果が不安定になります
- 計測を先に整える:自動入札は計測したコンバージョンをもとに学習します。計測が正しくないと、目標どおりに見えても実際の成果とずれます
- 管理画面の目標と事業の目標を分けて考える:管理画面の数字は計測できた分だけです。実際の成約や売上と定期的に突き合わせます
計測の精度を上げる方法は「コンバージョンAPIと拡張コンバージョン」、入札戦略の選び方は「Google広告の自動入札の選び方」で扱います。
中心の指標と補助の指標を分ける
KPIを置くときは、判断に使う中心の指標と、原因を探すための補助の指標を分けておくと、数字を見たときの動き方が決まります。
| 区分 | 指標の例 | 使い方 |
|---|---|---|
| 中心の指標 | CPA、ROAS、コンバージョン数 | 目標を達成しているかを判断する。上長や経営との会話もこの数字で行う |
| 補助の指標 | CTR、CPC、CVR、表示回数、インプレッションシェア | 中心の指標が動いたときに、どこが原因かを切り分ける |
| 事業の指標 | 成約数、成約率、売上、解約率 | 広告の成果が本当に事業に効いているかを確かめる |
たとえば CPA が悪化したときは、まず CPC と CVR のどちらが動いたかを見ます。CPC が上がっていれば競合や入札、CVR が下がっていれば LP や検索語句、計測の不具合を疑う、という順で原因を絞れます。
よくある失敗
- CPAだけを下げようとする:CPA を下げることを優先しすぎると、配信が絞られて成果の数が減り、事業の目標に届かないことがあります。件数の目標とセットで見ます
- リードの質を見ない:問い合わせの CPA は良くても、成約につながらないリードが増えていることがあります。営業の数字と月に一度は突き合わせます
- 媒体ごとに違う定義で比べる:Google広告と Meta広告では、コンバージョンを数える期間や方法の設定が違うことがあります。比べる前に、何をどう数えているかをそろえます
- 計算した目標をいきなり自動入札に入れる:実績と離れた目標で配信が止まりかけることがあります。実績に近い値から段階的に近づけます
KPIは定期的に見直します
KPIは一度決めたら終わりではありません。商品の価格や粗利率、成約率、競合の状況が変われば、許容CPAも変わります。一般的には、四半期に1回ほど、事業の数字と合わせて見直す会社が多いです。
インハウスマーケでできること
インハウスマーケは、TUKURO が第三者の立場でインハウス化を支援するサービスです。代理店に運用を任せている場合でも、KPIを自社で決められるようになることが、インハウス化の第一歩です。無料の簡易診断では、いまの費用と体制から、どこから始めるとよいかの目安をお出しします。


